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東京高等裁判所 昭和22年(行ナ)7号 判決 1949年3月09日

原告

籠島誠治

被告

特許局長官

主文

特許局が、同庁昭和二十二年抗告審判第四二号事件につき、昭和二十二年七月十八日になした審決を取消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、主文と同旨の判決を求め、その請求の原因として、第一、原告は、「KODOMO」の羅馬文字を横に一連に記載し、その下部の中央に、縱に「コドモ」の片仮名文字を記載した商標について、昭和二十一年十月十五日商標法第五条の規定によつて商標法施行規則第十五条に規定する類別第四十七類穀菜類、種子、果実、穀粉、澱粉及びその製品を指定商品として、特許局に登録出願をしたところ(昭和二十一年商標登録願第一〇〇八七号)特許局は昭和二十二年五月十六日、右は登録第二四九四八七号商標と類似し、同一又は類似の商品に使用するから、商標法第二条第一項第九号の規定によつて登録できないとして、拒絶査定をした。よつて原告は、同月二十四日右拒絶査定に対し、抗告審判の請求をしたところ(昭和二十二年抗告審判第四二号)、特許局は同年七月十八日同一理由を以て、「本件抗告審判請求は成立たない。」という審決をした。

然るところ右抗告審判の審決書の原本には、審判長特許標準局抗告審判官上山操の捺印がない。商標法施行規則第十六条によつて準用している特許法施行規則第六十三条第一項の規定によれば審決には審判官の記名、捺印をしなければならないのであるから、本件の審決に右審判官上山操の捺印がないのは不適法であつて、これを取消すべきである。

第二、仮に本件審決が不適法として取消すべきものでないとしても、本願商標と原審決に引用されている登録第二四九四八七号商標とは類似商標とはいえないから、これを類似商標であるとして原告の抗告審判請求を排斥した原審は不当であるからこれを取消すべきである、と述べ立証として甲第一、二号証を提出して乙第一号証の成立を認めた。

被告代理人は原告の請求を棄却するという判決を求め、答弁として、原告主張の事実中、原告主張の本願商標と原審決に引用する登録第二四九四八七号商標とが類似商標でないとの点は否認するが、その他の点は全部認めると述べ、立証として乙第一号証を提出し甲第一、二号証の成立を認めた。

理由

原告主張の第一の事実は、全部被告の認めるところである。而して商標登録出願の拒絶査定に対する抗告審判請求の審決には、審判に関与した抗告審判官記名捺印しなければならないことは、商標法施行規則第十六条により準用される特許法施行規則第六十三条第一項により明らかである。かように抗告審判の審決に抗告審判官の記名捺印を要するものとしたのはその審決が資格ある抗告審判官の自ら関与して成立したものであることを担保する為であつて、これが記名又は捺印を欠くときは、果して審決に表示されている抗告審判官が、審決に関与しその責任において成立したかどうかを確認し難く、従つてその審決が適法になされたか否かを確認することができないからである。故に抗告審判の審決に、これに関与した審判官の記名又は捺印を欠いているときは、該審決は違法として取消すべきものと解しなければならない。然るに原審決は審判長抗告審判官上山操の捺印を欠いているのであるから、これを違法として取消すべきものとなさざるを得ない。よつて訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。

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